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新宿簡易裁判所 昭和52年(ハ)590号 判決

原告 株式会社セントラルファイナンス

右代表者代表取締役 西田貢

右訴訟代理人 岩越亨

被告 知念孝

主文

一、被告は原告に対し、金一九万五、六四四円およびこれに対する昭和五二年一月六日から支払済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

二、原告のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用は被告の負担とする。

四、この判決は第一、三項にかぎり仮に執行することができる。

事実および理由

一、請求の趣旨

主文第一項但し付帯請求として日歩八銭の割合による金員の支払いを求め、第三、四項と同旨。

二、請求原因の要旨

1  原告は昭和五二年七月中日信販株式会社と合併し、いわゆる出資法に基づき貸金業を含む会社である。

2  原告は被告との間で、昭和五一年六月二二日左記の約定で書籍購入の立替払契約をなした。

(一)  被告が右同日訴外株式会社ほるぷから筑摩文学大系を購入した代金二五万六、二五六円のうち金二二万四、〇〇〇円を原告が立替え払する。

(二)  被告は原告に対し、右立替金を昭和五一年八月から昭和五三年七月まで毎月六日限り金七、三〇〇円宛二四回に割賦して支払う。

但し昭和五一年八月初回は金二万八、三五六円、昭和五二年一月及び同年八月、昭和五三年一月の各月は毎月の支払額に各金二万円を付加して支払う。

(三)  手数料金三万二、二五六円

(四)  割賦金の支払いを遅滞したときは期限の利益を失い残額を一時に支払う。

(五)  遅延損害金日歩八銭

(六)  管轄裁判所を新宿簡易裁判所と合意する。

3  右契約に基づき、原告は昭和五一年六月末日前項(一)の訴外会社に対し右代金を立替え払した。

4  しかるに被告は昭和五一年九月二〇日までに金二万八、三五六円を支払ったのみでその余の支払いをなさないので、原告は被告に対し昭和五一年一二月一六日到達の書面で二〇日間の期限を定めてその支払を催告したが、これを支払わなかったことにより昭和五二年一月五日の経過により割賦償還の期限の利益を失い、その後の割賦金の支払についても弁済期が到来した。

5  よって、被告に対し立替残代金一九万五、六四四円及びこれに対する昭和五二年一月六日から支払済に至るまで約定利率日歩八銭の割合による遅延損害金の支払を求める。

三、被告の不出頭

被告は適式の呼出を受けたのに本件口頭弁論期日に出頭せず答弁書その他の準備書面を提出しないから民事訴訟法一四〇条三項により原告の主張事実を自白したものとみなされた。

四、遅延損害金について、

(結論)

原告は貸金業者であることを前提として、立替金の賦払不履行における遅延損害金について利息制限法に定める制限利率の範囲内である日歩八銭(年二割九分二厘)の割合による支払を求めるものであるが、本件立替金の支払は実質においてローン提携販売における書籍購入者たる被告の売買代金債務の保証履行に当るものと認められるから割賦販売法六条の類推適用により商事法定利率年六分の限度を超える部分の請求は許されない。

(理由)

1  ローン提携販売について、

原、被告間の本件書籍購入の立替払契約は、販売業者たる株式会社ほるぷに対する書籍購入代金の一部(八七・四%)の支払に充てるために原告が被告に代って立替え払をなしこれが立替金の返済につき「二月以上の期間にわたりかつ三回以上に分割して返済する」ことを条件とし、いわゆる毎月均等払ボーナス併用方式により割賦返済を約し、かつ書籍が割賦販売法における指定商品(同法施行令一条別表第一の七)であるから右契約機能の実質において割賦販売法所定のローン提携販売に当るものといわなければならない。

なお、原告代表者の資格証明として訴状に添付された商業登記簿謄本によれば、原告の営業主目的が「割賦販売斡旋業」であることが明らかである。

2  割賦販売価格について、

原告が一部立替払をした筑摩文学大系の代金は現金販売価格に相当するものと推認されるところであるが、原、被告間の書籍購入の立替払契約に基き、立替代金に対し一四・四%の利息とみられる手数料を加算して分割払の約定をなし、これに基き本件立替残代金の請求をなしているものであるから、現金販売価格に右割賦手数料を加算した金額こそ割賦販売法六条二号にいう「割賦販売価格に相当する額」に当るものというべきである。

3  割賦販売法六条の類推適用について、

割賦販売法の制定は購入者らの利益を保護することを主目的(同法一条)とするいわゆる消費者保護立法にして、同法六条は購入者が指定商品を割賦購入する買主である場合に、割賦金の支払が遅延したとき過大な遅延損害金を付帯請求されることの苦痛から買主を保護することを目的とし同条は「割賦販売」規定の総則に位置し「割賦販売」とはまさに「二月以上の期間にわたりかつ三回以上分割して返還すること」を根幹とするものであるから、ローン提携販売における準用規定の有無を検索するまでもなく同法六条の類推適用を受けるものといわなければならない。

五、結論

右認定事実により本件立替残代金の付帯遅延損害金に関する約定利率日歩八銭(年二割九分二厘)のうち商事法定利率年六分の割合を超える部分は割賦販売法六条に違反し無効である。

よって、原告の被告に対する立替残代金一九万五、六四四円およびこれに対する割賦償還の期限の利益を失った日の翌日である昭和五二年一月六日から支払済に至るまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから、その限度においてこれを認容し、商事法定利率を超える部分の請求については理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 田中浩二)

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